基本的考え方
次のような諸点から、設備工事の分離発注が必要である。
- 高度成熟化経済社会を迎えつつある今日、建築物のユーザーにとって利便性、快適性、効率性等が優れた高い機能を有する建築物であるためには、建築設備の内容と質が価値を左右する状況となっている。特に、高度情報化の進展に伴うユビキタスネット社会の到来により情報通信設備、システムの高度化、複雑化、多様化が益々進行する情勢となっている。
- 建築物における環境問題への貢献、対応という見地から、建築物についての環境負荷低滅、省資源・省エネルギーに対するユーザー、社会の関心が高まっているが、建築設備はこれからの対策に大きくかかわっている。
- 設備工事はそれ自体独立した高度専門分野を形成し、施工の実態においても躯体等を主とする建築工事とは異なった一式工事として機能しており、このため、多数の高度専門技術者と永年蓄積したノウハウを有している。
- 高度成熟化経済社会の到来に伴い人々の関心、ニーズも建築物のイニシアルコストの点のみではなく、長寿命に耐えうるというライフサイクルコストへの関心が高まってきており、この面での設備の果たすべき役割が極めて大きい
建築物の60年間のライフサイクルコストを見た場合、イニシアルコストは全体の17%であるのに対し、ランニングコストは83%を占め、このうち設備関連が半分となっている。
- 建築ストックの増大に伴うリフォーム、リニューア工事の比重が次第に高まりつつあるが、これら工事は設備がその中心となっている。
- 設備工事の分離発注は公共工事の基本的ルールとして永年にわたって定着し、最近では民間工事でも主要企業が分離発注の方向に向かいつつある。